今年秋から、もう一度石英ガラスの電気分解をしてみようと思っている。今から30年以上前に電気分解でT-230Uという製品を開発したのだが、如何せんこの技術を究めたとは言い難かった。この技術を究めてみようと思っている。
世界を驚かせたこのT-230Uだったが、おそらく石英業界では日本が初めて発明した技術だったと思う。それまで日本は欧米の技術の導入しかしてこなかった。ヘラウス、サーマルシンジケート、Q&C、GEクォーツが技術を独占し、それを東芝セラミックスは真似をしていた。東芝セラミックスの石英ルツボだって、GEクォーツを見学した人が始めたものだった。私が東芝セラミックスに入社した1980年代は欧米から30年くらい遅れていた。このT-230Uの出現、そのあとの透明層ルツボT-230Wの商品化は日本が石英において欧米に追い付いたと思った事件だった。
でもその後の日本石英業界の進歩も止まってしまった。信越化学のステッパーレンズだって、ヘラウスの技術の模倣だ。スート法合成だって、196年代にサーマルシンジケートによって開発されたものだ。
新しい画期的技術は、新しい発想によりできる。それは文献を調べることでは達成できないものだ。おそらく幅広い知識と洞察力によってひらめくものだ。今の技術者は専門知識はあるかもしれないが、物理、化学はもちろんのこと、数学、哲学、いろんな知識が欠けている。穴を掘るときにまっすぐに掘るのではなく、円錐状に掘るのだ。
さて石英ガラスの電気分解だが、こんな研究をやるのは私しかいないということで、私がやるのだが、昔はNa,K,Li,Cuの移動にばかりこだわっていたが、最近は、Hの挙動について興味が湧いてきている。当然、電気分解によってH+は簡単に動く。しかし、移動速度やシラノール基との関係はいまだ持って不明のままだ。実は昔も気づいていたが、電気分解処理の後は酸素欠乏の吸収ができる。このことを含めたトータル的な論文を書いてみたいのだ。
もう私が石英ではラストエンジニアかもしれない。まだ老てなるものかと自分に鞭を入れる。技術者は死ぬまで技術者であり続けたい。