1954年から72年にかけて、アメリカの動物行動学者のジョン・B・カルホーン氏が行った実験があって、4匹のつがいのマウスに十分な広さと無限に与えられる食餌、運動できる場所や適切な気温と湿度が保たれた部屋を用意した。
このマウスたちに天敵のいない最高の環境を与えて、その営みを観察した。
この部屋には3840匹のマウスを収容できることが可能で、産めよ増やせよとマウスの個体数は2200匹ほど増えたという。そして、そこから減少し始めた。
マウスは単独で活動するけれど、群体で餌を食べに行くようになった。1匹でいることに不安を覚え、1匹で行動していたマウスも群れて行動するようになる。
そして、群れの中で全く活動しない引きこもりが現れた。この引きこもりはメスとの繁殖を拒み、食餌と睡眠と身体の手入れだけで過ごしていた。身体に傷もなく、健康的だったオスは「美しいもの」と呼ばれた。
美しいものは同じマウスたちの社会に積極的に干渉することはなかったけれど、時には攻撃的になり、ほかのマウスを襲ったという。
メスもまた繁殖行動に関心が無くなり、「美しいもの」として引きこもってしまった。
美しいもの以外のマウスはどうなったのかというと、メスがオスのように攻撃性を持つようになり、自分の子供も攻撃するようになってしまった。
子どもは巣離れをせざる得なくなり、引きこもりになるか食べられてしまった。
そして、メスの妊娠率も低下し、流産率は上昇、マウスの出生率が急激に下がりだした。
オスもまた心理的に異常を起こし、求愛ルールを無視した行動が見られるようになった。成熟していないメスに交尾行動をとったり、同性に交尾行動をとると言ったケースが増えていく。
この実験が560日になったとき、マウスの増加がぴったり止まってしまう。乳児の死亡率は急増し、高齢化が進んでいく。
やがて、出生率より死亡率が上回るようになり、少しずつマウスの数が減少していった。
そして。1780日目に最後のオスが死亡し、滅亡が決まった。
この実験は数回行われ、ほぼすべて同じ結果になったという。
神は食物連鎖と天敵のシステムを作った。それは種の保存のためだったのか。食物連鎖と天敵のシステムが狂えば、種は絶滅していく。これが自然の摂理なら、人類もまたこのような道を通るのだろうか?