ほとんどアスベスト(石綿)が原因とされる肺や心臓などの膜にできるがん、中皮腫による死亡者が2022年に累計で3万人を超えた。統計を取り始めた1995年当時500人だった中皮腫による死亡者数は20年後の2015年には1504人と3倍に増加。2021年には1635人まで増えた。2022年は1554人で若干減少したが累計ではついに3万人を突破し、計3万1402人に達した。
アスベストの言葉の由来はギリシャ語で永久不滅という意味だ。古代ローマでは紀元前2500年頃から様々な場面でアスベストが使われていた。紀元前400年頃、ペロポネソス戦争など戦が多く、村の焼却など、”火”の原因で亡くなることが多かった。その頃から、焼死対策のため耐火性を持つアスベスト繊維を布に織り込んだ衣類が使われた。紀元前450年頃には火葬後に遺灰だけを残すため、アスベストの布を死衣装として故人に包むようになった。西洋では、東洋の「火鼠」に対して、「サラマンダー」という「幻獣」が登場する。古代ギリシャでは、サラマンダーは、火の中でも燃えない動物で、火の中を歩いて、火を消す生き物として紹介されている。中世では、「サラマンダーの皮で作った布」と称するものが登場し、火でも燃えない、火に投げ込んで洗濯できる等というキャッチフレーズ”で販売されていた。
アスベストは、耐熱性が良く、断熱性にも優れ、安価なために大量に消費された。特に、体育館や駐車場などの建物に吹き付け剤として使用された。そのアスベストがはがれ空中を漂っていた。もちろん解体時には遠くまで汚染が広がった。私は就職以来、高温のところにはアスベストを使用していた。耐熱手袋もアスベストでできていた。その有害性については古くから知られていたが、止められなかった。アスベストを止めたのは1973年 世界最大の石綿メーカーのジョンズ・マンビル社(アメリカ)は、製造者責任を追及され、訴訟で、製造者責任が認定されると、次々と類似の訴訟が起こり、賠償金も20億ドルに達し、1982年に倒産したことだった。これを受け日本でもやっと規制に乗り出した。
1971年に特化物に指定、1972年に安衛法の制定、1975年、アスベストの吹付において5%以上の含有量を規制。1995年、安衛法で製造の禁止。2006年、アスベスト製品の全面禁止が行われた。しかしこの規制はイギリスなどに比べ、15年は遅れている。経済を最優先にしたがために、被害が大きくなった例は多い。しかし過去の経験を生かそうともしない姿勢をどうにかしないといけないのだが。