敗軍の将は兵を語る

4〜6分

 2023年2月、三菱重工業はMRJの開発中止を発表した。元社長川井昭陽氏はその原因を「型式証明」とした。彼は「苦労の末に招き入れたボーイングのOBたちと、三菱航空機の技術者たちとの間に、溝のようなものを感じていた」と述べた。
「そのすごさが教わる側が分かっていれば、ちゃんと聞くんですけど、私がいろいろなことを言っても、彼らは『自分のやり方でやります』とはっきり言うとそういうタイプ。その当時の技術者は“うぬぼれ”があったのではないかという気がしています。飛行機としてはいい飛行機を造ってくれます。いわゆる履き違えていたんです。飛行機を造ることと、安全性を証明していくことは違うことなのが分かっていなかったんだと思います。やっぱり謙虚さに欠けていたところがあると思います」
この話を聞いて違和感があった。組織を束ねたトップがこういうことを言うとは信じがたい。トップは組織を作る権限を持っている。「型式証明」を取るのであれば、徹底的にとれる体制を作ることこそがトップの役割なのだ。
中国の民間航空機ARJ21やC919の場合、この型式証明は中国民用航空局のものであって、米国のFAA(連邦航空局)のものではないため、中国国内でしか飛ぶことができないが、中国国内での航空機需要も大きく、販売には問題がないと判断したのだろう。実は日本にも中国と似たような組織があり、認証を行っているが、FAAやEASAが認証した機体を追加承認する程度のことだ。1964年にFAAの型式証明を取得したYS-11は182機の生産を行った。日本がそれ以来航空機製造をしなかったというのは日本政府の問題が大きい。航空産業は国家が優先してやることだからだ。では三菱重工業がなぜ中国のように国内認証だけにしなかったのだろうか?それは営業戦略にあった。受注数は海外が多かったのである。日本にはANAやJALがあるが、わずか20機程度の発注数であった。中国と違い、飛行機で移動するより新幹線で移動したほうが利便性が高いことが不利に働いた。
これで日本の航空機産業は消滅したに等しい。ホンダの小型ビジネスジェット機があるが、ホンダの米国子会社であるホンダエアクラフトカンパニーがやっている。三菱重工業にしてもこういう選択があったはずだ。失敗の原因を技術者のうぬぼれという社長にはできなかったかもしれないが。

WordPress.com で次のようなサイトをデザイン
始めてみよう