アメリカの食品ベンチャーが、アジア最大級となる培養肉の生産工場建設を10日から開始した。培養肉とは、肉から採取した細胞を、栄養成分が入った液体の中で増殖させて作ったもの。新工場には、この培養肉を生産する“バイオリアクター”と呼ばれる巨大な装置が設置される予定で、2023年初めにも工場が稼働すれば、培養肉の大量生産が可能になるという。
百武弘一朗記者「鶏肉本来の繊維質な食感もありますし、また、この鶏肉の味わいや風味を感じます。これが細胞から作られた特殊な肉だというのは、全く感じません」
シンガポールは現在、90%以上を輸入に頼っている状況で、2030年までに、食糧自給率を30%に引き上げる目標を掲げている。その鍵として目をつけたのが、培養肉。シンガポールのグレース・フー環境持続相「シンガポールを食品技術の世界的研究拠点として発展させるため、積極的に取り組んでいく」家畜の飼育や食肉処理をすることなく生産でき、温暖化対策にも有効な“持続可能な肉”として、世界から注目されている培養肉。
代替タンパク質の業界団体・GFI APACの担当者「培養肉の最大の課題は価格です。まだ高価です。培養液が最大のコスト要因です」
日本では大豆由来の肉もどきが販売されている。培養肉は東大と日清がやっと研究に着手した状態で大量生産などは遠い未来の話だ。シンガポールのように培養肉を承認し、国家プロジェクトとしてやるようでなければ進まないだろう。日本はここでも遅れている。
中国にある「極麋生物」という会社の創業者の曹哲厚氏は「極麋生物は、従来の細胞培地の重要成分をダイズやトウモロコシなど安価な原料から抽出した天然エキスに置き換えることで、培地のコストを抑えている。代替比率は約50%まで引き上げた。今年は培地のコストを1リットル当たり100元(約1900円)に近付け、来年には20元(約380円)を目指す。また、今年は牛肉の細胞バンクを設立する予定だ」と話す。 曹氏は、5年以内に細胞培養肉のコストを1キログラム当たり100元(約1900円)に下げる計画だ。同氏は「価格が高いままでは大衆向けの製品にならない。多くの人が試してみたいと思い、価格も受け入れることができる細胞培養肉製品をつくることが目標だ」と語った。驚異的な目標である。中国といえば、抗生物質漬け、ホルモン剤漬けの肉である、そして牛肉などは噛み切れない。培養肉はいいことづくめなのだ。
なぜ日本の開発は遅れてしまうのだろう。とある人が言うには「日本の伝統的な価値観では、役所なら財務省の事務次官になる、大企業なら社長、銀行なら頭取になるのが上等な人生だということになっている。でもアメリカは「ログキャビン(丸太小屋)から大統領へ」という言葉があるくらいで、ハーバード大から大統領がアメリカンドリームではない。新しいことに挑戦している中小企業の社長は、大企業から見下されるような存在ではないのです。そのカルチャーの差が非常に大きい」である。私も日本以外でのほうが評価されている。よく中年のおばさんに「海外に行けていいわね」といわれるが、日本ではそんなもんなのである。
私は肉を食べるが、生き物が殺されるのを見たくない。鳥だって、豚だって、牛だって殺されることを気づいていて、泣きわめく。培養肉になれば鳥も豚も牛も野に帰る。培養肉は魚も作ろうとしている。今、食の革命が起きようとしている。日本に革命は似合わない、などと言っている場合ではない。