辻次郎名誉教授死去だが

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 辻 二郎氏(つじ・じろう=東京工業大栄誉教授、有機化学)1日午後5時30分、悪性リンパ腫のため東京都港区の病院で死去、94歳。滋賀県出身。葬儀は親族で済ませた。

 希少金属のパラジウムを触媒に用い、炭素同士の結合を実現できることを世界で初めて見いだした。2010年のノーベル化学賞を受賞した鈴木章・北海道大名誉教授(91)らが開発した「クロスカップリング反応」の礎となった。1994年紫綬褒章受章、2004年日本学士院賞受賞。 

 私の大学院時代の研究もパラジウム触媒を用いた有機合成であった。この分野では2010年、ヘック、根岸英一鈴木章がノーベル化学賞を受賞した。「パラジウム触媒を用いたクロスカップリング反応」が受賞理由だった。私はよく知っているが、実はこの反応は「溝呂木・ヘック反応」と呼ばれていた。1972年にヘックが発表して先駆者として認定されたが、実は東京工業大学にいた溝呂木勉助教授が1971年に発表していた。この人は1980年に他界している。辻次郎氏はその時、一緒に働いていた。彼は溝呂木氏の功績を訴え続けた人でもある。

 私はパラジウム触媒を使って不斉合成をしていた。通常ヘック反応は、付加したアリルまたはアルケニル基の付け根の水素がβ-脱離するため、新たな不斉炭素を生成しない。しかし、1980 年代終わりにβ-水素脱離の方向を制御することにより不斉反応への展開が可能であることが初めて示されて以来、多くの反応例が報告され、天然物や生物活性物質の合成に利用されているのである。その当時ヘックは車いすで大学に出ていて自分で実験をしていた。大きい実験台にフラスコを10個も並べて一気に実験していた。

 光学活性(キラル)のある化合物は、鏡像体を持つ。L-Rである。昔だからL-R体を分離するのに融点の差を利用していた。数度の差でどっちかを析出させる。種ができれば簡単になる。LとRは生体反応が全く異なる。私はなんという複雑な世界にいたのだろう。野依良治はパラジウム触媒を使った不斉合成でノーベル賞を取った。私が応用化学を続けていたらどうなっただろうか?考えてもイメージがわかない。向いていなかったのだろう。

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