よく昔の夢を見る。
東芝セラミックス時代、石英ガラス粉から焼結によってフィルターを作っている組長がいて私はそのやり方を見ていた。彼は粒度を変えて様々な気孔サイズのフィルターを作っていたのだが、どのくらいの気孔径かは知らなかった。そこで頼まれてもいないのに、フィルターの気孔径を測ってやろうと思った。会社の図書館にロシアンアカデミーのフィルターに関する本があったことを思い出した。ロシア語辞典を買って訳してみた。その中にフィルターの気孔径を測定する方法があり、図面を引いて同じものを作った。結果はうまくいった。
同じころ、ユニミンの原料の使い始めの時、Cuの値が異常に高かった。おそらく工程のどこかに銅製のものを使っていたのだろう。Cuの問題についての解析を依頼されたのだがCuの石英中の拡散について調べるために電気炉を自作してUVランプで拡散速度を求めた。その後、拡散方程式を使い検証したが、石英ガラス中のCuの拡散速度は実験結果とほぼ同じだった。Cuの拡散速度は速く半導体用で使用するのは非常に問題との結論になった。ユニミンに説明し改善してもらったのだが、在庫があった。そこで粉を酸処理して使用した。
若いころは多くの仕事をした、自分の仕事と関係ないことも多かったが広範囲の仕事をする経験は生涯にわたり宝物になる。今の技術者は専門化しすぎる。専門化は悪くはないが、幅広い知識と経験は必ず役に立つ。特に技術者に必要なのは哲学だ。時間がある学生時代に本をたくさん読み、挫折を経験し、自分の生きる道を知ることがいい。私は大学生時代に知ったヘッセの「クヌルプ」が生涯の師である。価値観の違いは私を「変人」と呼ばせたが、気にしない。