中国の工場ではオートクレーブを使ってシリカと水酸化アルカリから水ガラスを作っている。これにより水ガラスのシリカと酸化ナトリウムの比率(SiO2/R2O)を変えて作ることができる。比率が小さいと反応せず、つまり水酸化アルカリの量を増やしていくと反応は進んでいく。後工程でアルカリを除くイオン交換処理があるので、生産性のためには比率はなるべく低い方がいい。したがって天然石英粉代替えのためにはできるだけアルカリを含んでいない水ガラスを作る。その場合、できた合成シリカ粉のアルミニウム含有量が若干高めになる。高いといっても0.5~0.1ppmなのだが。この水ガラス化反応は使用するシリカによって反応速度が変わることは自明である。すなわち天然石英粉<石英ガラス粉<フュームドシリカの順である。 私は出来た合成シリカ粉のアルミニウム含有量は水ガラスのアルミニウム含有量によると思ってきた。しかし、それが間違っていたらしい。
私は30年くらい前に日東化学工業の八戸工場を見学したことがある。そこでは水ガラスから合成シリカフィラーを作っていた。水ガラスをノズルから硫酸槽に出してチューブのようなシリカを作り焼成する。今は三菱レーヨンと合併し、事業もやっていないが、その見学で技術責任者が言った言葉がずっと気にかかっていた。彼は小さな声で私に「何回もろ過すると純度が良くなる」と言った。
通常の水ガラスは乾式法で作る。すなわちシリカと炭酸ナトリウムを1400℃くらいで反応するのだが、この方法によって作られた水ガラスはポリマーやトリマーを形成しろ過しにくくなる。その点、湿式法は低温で反応するためポリマーができにくくろ過しやすいのである。オートクレーブ後の水ガラスは黒い液体である。オートクレーブの鉄分が混入しているのである。これを細かいフィルターでろ過すると無色の液体となる。熱い状態でろ過すると液体の粘度が低いので簡単に通過する。そこで石英ガラス粉を原料にして、アルカリ水溶液濃度と最終シリカ純度のデータをとってみた。すると濃度が濃くなった方がアルミニウム含有量が低くなったのである。この理由はろ過後でも細かいシリカ粒子が存在したためそれがイオン交換で除去できなかったことを示している。そこで石英ガラス粉を天然から合成にしてみたらアルミニウムは検出限界以下に落ちた。またろ過を繰り返したところ、アルミニウム純度は合成に近いアルミニウム含有量になったのである。 日東化学工業で聞いた言葉は本当だったのだ。30年を経て実証できた。
中国の工場では技術者に休みはない。データは取り放題だ。急激に技術が進歩しているのはそういう事情もあるのではないだろうか?頭が悪ければ体を使えである。