人生には思いがけないことがある。今から15年位前、上海のマリオットホテルの最上階のバーでユニミンの副社長のブースと二人で飲んだことがあった。ブースとは長い付き合いだった。東芝セラミックスにいた時だが、その当時インドの原石を使っていた。それをユニミンの粉に変えようとしたのだ。理由は自社生産の原料が高かったためだ。40年近く前のことだ。その当時のユニミンの粉の品質は良くなかったが、やり取りをして使用できるようになった。
そのうす暗いバーでカクテルを飲みながらブースが言った言葉が今でもうれしくて忘れられない。 「私は世界中の石英メーカーを訪問してるが、世界で優秀な技術者を知っている。GEクオーツ(現モメンティブ)のハンセン、ヘラウスのなんとか(忘れてしまった)、Q&Sのなんとかと君だ」 そう言われて感激した。他人からの評価など気にしなかった私にとって意外だったが常に新しいことを求めてきたことが間違ってはいなかった。
5年位前、私が中国に来て10年くらいたった時、中国石英協会の総会で講演したことがあった。その時の宴会の席で言われたことがある。 「もうお前は中国人だ。中国の石英でお前を知らない人はいないからだ」 中国人は親しみがある。技術者を尊敬してくれる。私は技術者をダンサーに例える。ダンサーは良い舞台と良いお客を求めて移動する。お客を満足させるためには切磋琢磨が必要だ。すべてのしがらみを捨ててそこに集中する。飽きられれば終わりだ。そういう危機感と緊迫感を持ち続けなければならない。
技術者の本懐は自己満足だというが、自分は常に評価される。自己満足で終わってはならない。最後は社会に貢献しなければいけない。技術が社会に貢献して初めて技術としての本懐が達成される。道は長い。途中で倒れてもいい。高い志があっただけでもいい人生だと思えるのだから。