私のやることは時代が早い。これは今あるニーズで開発するのではなく、将来こうなるというシーズに基づいて開発しているからだ。今度SEMICON JAPANで展示する安価な合成石英ガラスの時代が来年やってくる。一つはエッチャーパーツだ。今は天然石英ガラスのリングが使用されているが、もう限界になっている。この天然石英ガラスは中国においてアンゴラ水晶粉を酸水素炎で溶融して得られる。水晶は多くの不純物を含むがとけやすいために使用されている。ただこの方法では気泡が少ないものはできない。今までは品質より価格だった。しかし、最先端の5nm以下の半導体ではパーティクルや寿命の問題があって合成石英ガラスへの移行が検討されている。
四塩化ケイ素を使用して製造される合成石英ガラスのコストは高い。半導体メーカーは二の足を踏んできた。私の開発した水ガラス法合成シリカ粉をプラズマ溶融して作った合成石英ガラスはコスト的に安い。品質的には、エッチャーパーツにとって重要な難プラズマ性の不純物が少ないこと、気泡が少ないことによるパーティクルの減少が可能だ。寿命も大幅に伸びる。
私は三年前、中国に合弁会社を作り開発をしてきた。用途がないため、光学用のレンズ向けの合成石英ガラスを売ってきた。中国では市場は大きいのだが物足りなさを感じていた。しかし、チャンスを待つしかないと考えていた。それが来年やってきそうだ。
最終顧客はサムソンとTSMCだ。彼らはすでに5nmを量産している。さらに4,2nmの量産化を目指している。日本には市場はない。なにせ日本では40-50nmの半導体しかやっていない。今度熊本に進出するTSMCの工場は18nmだ。中国ですら今度は28nmだ。政府がいくら半導体をやるといっても、だれも成功するなんて思っていない。もうすでに日本は負けたのだ。負けても日本の技術はすごいと思っているなら敗戦から引き揚げてきた老人兵と同じだ。
シーズ研究というのは、孤独で辛い道だ。開発が終えても売れることはない。自分で売りに行くか、売れる時を待つかだ。でも日本に本当に必要なのはシーズ研究だ。開発者はその日が来ることを信じて実験をするのだ。