文部科学省と経済産業省は、次世代の原子炉として期待される日本原子力研究開発機構の高温ガス炉「HTTR」(茨城県大洗町)を利用し、脱炭素エネルギーの「水素」を作る技術開発に本格的に乗り出す。隣接地に2025年頃、水素の製造施設を着工する計画で、両省が来年度概算要求に設計費など計約30億円を初めて盛り込む。
水素の製造は現在、化石燃料を燃やした熱を使い、メタンと水を高温で反応させる方法が主流。HTTRは、通常の原子炉よりはるかに高い900度超の熱を得られるため、同機構は運転時に二酸化炭素(CO2)を出さない熱源として、水素製造に活用する研究を進めてきた。その結果、安定的に水素を製造できる見通しが立ったという。この技術は、政府が7月に発表した新しい「エネルギー基本計画」の原案で重要課題に位置づけられた。
原子炉から熱を取り出す冷却材として、通常の原子炉は水を使うが、HTTRはヘリウムガスを使っている。新設する水素製造施設に、高温のヘリウムガスが循環するパイプを原子炉から延ばす計画。30年までに、既存の水素製造法を、HTTRの熱で安全に実施できるか検証する。この方法ではメタン由来のCO2が出るため、メタンを使わずに水を熱分解し、CO2を出さずに水素を得る新手法の研究も進める。
この話を聞いたときに、はるか昔にやったことを思い出した。国家プロジェクトの「原子力製鉄」である。私が東芝セラミックスに入社した年はこのプロジェクトの最終年であった。「高温還元ガス利用による直接製鉄技術の研究開発」の名のもとに、原子力製鉄の研究開発は通産省工業技術院の大型プロジェクトの一つとして1973年から実施され、原子炉に接続する直接製鉄パイロットプラントの実現に必要な要素技術を確立し、1980年に終了している。私は入社した年に神奈川県秦野市にあった研究所に3か月間出張し、最後のまとめを手伝うことになった。秦野の研究所に着いたのは朝の8時だった。天の川という寝台列車でバック一つでやってきた。朝初めて会った上司は布施木課長という人だった。彼は私が眠いのにもかかわらず研究所を紹介し、装置の使い方を教えてくれたのだが、「一回しか言わないからな」といって早口で説明した。チームは私と布施木さんの二人だった。そこで忙しく測定や評価をしていた。
この時の経験は私の技術者人生においてかなりいい経験だった。大学院を出て何もわからない私にとって、装置をメンテしたり、改造したりできるようになったし、新しいことをやるための基礎を身に着けた。