最近、合成シリカ粉の溶融品を様々な用途に出しているのだが、溶融する方法(条件)によって特性が違うのだ。純度などは一緒だからシリカの構造が原因であることに間違いはない。ガラスは一般的にガラス転移点をはさんで液体、固体と別れるとされる。しかし、その定義は揺らいでいる。
私が若い時に、ガラス溶解用の分厚いルツボを切断してそれを連続黒鉛炉に入れて平板に成形していた時のこと。成形後に割れてしまうことがあった。これは切断時のひずみの影響だろうと思ってアニールをしてから成形するようにした。割れはなくなったが、思わぬところからクレームが来た。成形後の研磨で削れないというものであった。アニールしたことでシリカの構造が変化したことが原因だが、石英ガラスの強度がこれほどまでに変わるとは思いもしなかった。
石英ガラスは2000℃程度の温度で溶融して急冷させて作られる。2000℃時の構造をある程度保つような構造となるわけであるが、常温では不安定な構造となる。したがってアニールすれば安定なシリカ構造へと変化する。
私が石英ガラスにのめりこんでいる理由は、やればやるほど奥が深いからである。ケイ素と酸素の結合だけという単純な化合物がなぜこんなに多様性を持つのかが不思議だからである。若い時は、正四面体ユニットが様々なマトリックスを作るなどと言って納得していたが、今は本質について興味が湧いている。シリカは原子レベルもクラスターレベルも重要なのだ。
最近、水ガラスから合成シリカを作っていて面白いことがあった。我々はオートクレープを持っているため、様々な原料とアルカリ水溶液から水ガラスを作ることができる。フュームドシリカ、ホワイトカーボン、天然石英、水晶、石英ガラスなどから水ガラスを作り、合成シリカを作ったところ、それぞれの特性が異なっていたのである。水ガラスはほとんど同じものと思っていた私にとって驚きであった。
この世界では完全な結晶というものは存在するが、完全なガラスというものは存在しない。そしてその不規則性によってガラスの特性が決定される。後日詳しいテスト結果を書こうと思うが、長くなったのでこのくらいにしよう。
この宇宙は99.99%構造が同じでも0.01%のわずかな違いがその特性を支配するなのだ。わずかな差でも多様性が生まれる、このことは全宇宙にわたる普遍の法則だ。この世にある単純なものでも奥深く研究することで、誰もが目指す宇宙の普遍の法則にたどり着くことができそうだ。