世界半導体売上高1位であり、プロセッサメーカーのチャンピオンである米インテルは2016年、10nmプロセス(以下、プロセスは省略)の立ち上げに失敗した。その後、インテルは何度も「今度こそ10nmが立ち上がる」という発表を繰り返してきたが、現在に至るまで、それは実現していない。そのため、2015年以降、14nmを延命し続けている。
これに対して、半導体製造を専門とする台湾のファンドリーのTSMCは、2018年に7nmを立ち上げ、2019年には最先端露光装置EUV(Extreme Ultraviolet)を使った7nm+による量産を開始した。今年2020年には、5nmが立ち上がっており、来年2021年には3nmによる量産を始める。
インテルは7月末に開催された2020年第2四半期の決算発表で、ボブ・スワンCEOが、次世代プロセスの7nmが1年以上遅延していることを認めた上で、「Intelは2022年までに、次世代プロセス技術の社内開発を継続していくのか、またはファンドリーの活用を拡大していくのかどうかについて、決断を下す予定だ」と語ったという。
インテルが、どのような道を選択するのかは分からない。しかし、もう1つのプロセッサメーカーのAMDは、2008年に製造部門をGLOBALFOUNDRIESとして切り出し、既にファブレスになっている。そして、2018年以降、7nmを立ち上げたTSMCに生産委託して以降、プロセッサのシェアが急拡大している。インテルが10nmの立ち上げに失敗する直前の2016年第3四半期に17.5%しかなかったAMDのシェアは、2020年第3四半期に、その倍以上の37.6%に拡大する見込みである。
2019年における各種製造装置の企業別シェアを示す。多くの製造装置が、日米欧の1~3社の企業によって寡占化されていることがわかる。これは、次世代の製造装置には、巨額の開発投資が必要になるため、シェアが低い企業や財務が弱い企業が次々と淘汰されていったことに起因している。また、それぞれの製造装置は、高度なノウハウの塊になっており、新規ベンチャーが参入することが極めて困難であることも関係している。
露光装置においては、ASMLは88.5%のシェアを独占し、最先端露光装置EUVを供給できる唯一の装置メーカーとして君臨している。今や、TSMCやサムスン電子など、最先端の微細化競争を繰り広げている半導体メーカーにとっては、ASMLのEUVをどれだけ多く導入できるかが勝負となっている。
ところが、このような状態になっても、インテルは、EUVの前の世代のArFドライおよびArF液浸露光装置については、頑なにニコン製を使い続けている。つまり、ニコンの7%のシェアのほとんどは、インテルに依存していると考えられる。したがって、インテルがTSMCを使えばニコンの露光装置の息の根は止まる。
ドライエッチング装置は2019年は、ラムリサーチが47.3%、TELが26.5%、AMATが19.2%、そして日立ハイテクが5.6%のシェアとなっている。日立ハイテクはインテルに収めているだけだから、日立ハイテクの息の根も止まる。
半導体装置も、日本は勝てなくなるだろうと予感させられるインテルの動きである。よく、日本の技術が流出して半導体がダメになったという人がいるが、最先端においては画期的技術を開発したものが勝利者となる。日本が欧米の技術を導入し、改良してきたということ、すなわち欧米技術の信望者たる日本の経営者たちの敗北なのだと思う。